SACD: 奥田民生「LION」
SACD: 奥田民生「LION」
SME Records Inc. SEGL 1 2004年
SACD、ステレオ2チャンネル
2018年11月にヤフオク!で購入、1200円
懐かしさ | ★ |
楽曲 | ★★★ |
演奏 | ★★★ |
録音 | ★★ |
購入満足度 | ★★ |
再生して感じたのは、これは、Avid(昔だったらDigidesign) Pro Toolsの音なんだろうなぁ、であった。もう少し広く言えば、DAW(Digital Audio Workstation)の音。
1993年か1994年だったか、FOSTEXのADATレコーダー「RD-8」を買った。定価75万円。発売を待って買ったので、ほとんど割り引かれなかった(数年後に買った2台目はだいぶ安くなっていた)。1990年代は、米AlesisのADATが登場して、アマチュアがデジタルマルチトラックレコーダーを買えるようになった。本家ADATに比べると、RD-8は、単体でSMPTEまたはMTC(MIDI Time Code)のマスターになることができる点が安上がりだった。
当時私が構築したプライベートスタジオは、メイン卓がAllen & Heathの「GS3V」(アンバランス-10dBであったのが痛恨)、マスターレコーダーがTASCAM「DA-30」、その前段のエフェクターはヤマハのデジタルPEQ(Parametric Equalizer)「YDP2006」と、Behringerのコンプレッサー「MDX2000」だった。当時は44.1kHzまたは48kHzだったから、YDP2006でもよかったわけだ。ボーカルとかギターとかドラムとかをRD-8に収め、それにシンクさせてCakewalkを動かしてシンセを鳴らし、ミックスをしていた。
その後、ヤマハのサウンドボード「DS2416」を導入して、RD-8の出力をデジタルマルチでそこへ送り込んでミックスするようになり、Cakewalkのオーディオ機能が拡充されていくのに伴って、RD-8で録音した音を、Cakewalk側へ移すようになった。AlesisのAI-1を使ってデジタルダビングしていたと思う。こうすると、ボーカルやコーラスにAntares Audio Technologiesのピッチ補正プラグインをかけることができた。これは、場合によっては、どうしても使わずにはいられないものであった。
そのころ思っていたのが、RD-8の音をCakewalkに移して作業をすると、なんか、音が眠くなるなぁ、ということであった。眠くなるのをなんとかするために工夫すると、今度は音がざらついたり、余韻がおかしかったり、キンキンしたりしがちであった。
そういった記憶を、このSACDを聴いて、思い出した。SACDだから音がいいとは限らない。このディスクは「DSD Mastering」で、「オリジナル・アナログテープから、DSD方式でリマスタリングされたマスターを使用しています」であるそうだが、だから音がいいとは限らない。
Pro ToolsやDAWが悪いというつもりはなくて、やはりそれは道具であるから使い方次第である。Pro Toolsは、最初はトラディショナルなレコーディングスタジオでレコーダーの代わりとして使われることが多く、その場合は、トラディショナルなミキサーが横に鎮座していて、Pro Toolsの色をうまく消していたのであろうと思う。卓の色というのもあるわけだし。
その後、Pro Toolsだけでいいじゃん、という時代が来たのが、このディスクが作られた2004年ごろなんだろうか。
Pro Toolsでミックス(バウンス)すると何か変じゃね?という意見が出て、サミングアンプが流行して。
まあ、いろいろ私も試行錯誤しているわけだが、このごろは、自分が1990年代に作っていた音を再評価して、システムをそれに近い形に持っていっている面がある。もちろん、まったく同じではなく、DSD録音とかにブラッシュアップしている。DA-30は壊れて捨てた。RD-8も捨ててしまった。
そんなことを考えさせられた1枚。
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