SACD: 冨田勲(Isao Tomita)「ダフニスとクロエ(Daphnis et Chloé)」
SACD: 冨田勲(Isao Tomita)「ダフニスとクロエ(Daphnis et Chloé)」
Vocalion Ltd 2019年 CDSML 8554
SACD/CDハイブリッド、サラウンド4.0チャンネル、ステレオ2チャンネル
2020年8月にヤフオク!で購入、2780円
懐かしさ | ★★ |
楽曲 | ★★★ |
演奏 | ★★★ |
録音 | ★★★★ |
購入満足度 | ★★★ |
このSACDは2019年にリリースされた。冨田勲が1979年にLPレコードを発表した「ダフニスとクロエ」のマスターテープを基に、Michael J.DuttonがマスタリングをしてSACD化している。
同じレーベルから出た冨田勲「火の鳥」(記事はこちら)は、1975年録音、1976年リリースである。「ダフニスとクロエ」は1979年録音・リリースだ。2枚のディスクの背面を読むと、その4年で、冨田勲が使う機材が大幅に増えたことがわかる。それによって、火の鳥とダフニスとクロエでは、音の違いが生じている。
ポリフォニックシンセサイザー、ストリングスマシンといった、同時に複数の音を弾ける電子楽器が導入されている。ローランドの4音ポリフォニックシンセサイザー「JUPITER-4」、ストリングスマシン「RS-202」、ボコーダー+ストリングス「VP-330」(「Vocoder Pulse」と書かれているが「Vocoder Plus」が正しい)、ヤマハの8音ポリフォニックシンセサイザー「CS80」、ストリングスマシン「SS30」、コルグのボコーダー(クレジットされていないが「VC-10」だろう)、メロトロンである。
Moogモジュラーシンセサイザーは「Ⅲp」と「System 55」などがクレジットされている。ローランドのSYSTEM-700もある。ローランドのデジタル・シーケンサー「MC-8」もある。
こうして見てくると、私がシンセサイザーに興味を持ち、冨田勲のスタジオの写真を初めて見たころのラインナップではないかと思う。懐かしい。
火の鳥ではクレジットされていなかったが、ダフニスとクロエでは、dbxノイズリダクションの使用がうたわれている。テープレコーダーも、メインの「Ampex MM 1100」(16トラック)は変わっていないが、ティアックの16トラックと8トラック2台など、追加が目立つ。
以上のような機材の拡張があり、ダフニスとクロエの音は、火の鳥に比べ、音のパレットの色数が増えている。音も多い。ノイズはよく抑えられていて、弱音と強音の差も大きい。
一方で、Moogのモノフォニックを弾いていたころの「一音入魂」は薄まっている。dbxノイズリダクションはノイズを抑えるのに大きな貢献をするが、音が若干平板になるという印象を、私は持っている(dbxノイズリダクション付きの高価なカセットデッキを買って使っていた時期があった)。
そんなわけで、ダフニスとクロエの演奏と録音は、冨田勲にしては、最高のものとは言えないかなぁ、と思う。これはこれでいい音なんだけれど。
冨田勲のファンなら、買っていいと思う。1979年の冨田サウンドを、ちゃんと4チャンネルで聴ける。4チャンネル分、ある程度大きなスピーカーを用意して、お楽しみいただきたい。
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